恐怖怪談集0001

花子さんを訪ねて

 
 花子さん・・・・それは、学校などにいるトイレの主。学校によって違うのだが、立ち並ぶ個室の何番目かにそれは潜んでいて、トイレのドアを3回ノック、裏からまた3回ノックする。そして、「は〜な〜こ〜さん!」と呼びかけると、「はぁ〜いっ!」と、無人のトイレから返事が返ってくる・・・・・というのが、私の学校の噂だった。

 その当時、小学校低学年だった私は「探検隊」などをアホらしくも結成し、花子さんの噂の解明に必死で取り組んでいたのを覚えている。・・今から考えたら、赤面極まりないアホゥな行為なのだが、放課後、学校に遅くまで残り、トイレで花子さんを召喚するために、トイレのドアというドアを叩きまっくって、奇声を上げて逃げ回っていた。何も出てこないのに。
・・・いやはや、恥ずかしい思い出である。(今してる事もあまり変わらんのだが・・・(苦笑))

 私の知り合いのAさんも、学生時代、母校にこの様な都市伝説があったという。
やはり、やることは皆同じか、このAさんも花子さんの都市伝説を聞き、たった一人で花子さん発見を目指し日夜頑張っていた。
 ・・・・放課後、学校でまことしやかに囁かれる、噂のトイレへ。何番目のドアに「それ」が出現するのかは、だいたい目星がついてる。し〜んと静まり返る、寒々とした誰もいない学校の廊下。夕暮れ時に、あたりに誰もいない事を確認したAさんは、早速、召喚の儀式である「ドア叩き」を開始した。

・・・・・目的のドアの目の前にそっと立つ。

・・・・・「トン!・トン!・トン!」・・・・・・・・・表から3回ノックする。

・・・・・「トン!・トン!・トン!・トン!」・・・扉を開けて裏から4回ノックする。(Aさんの学校では、こういうやり方なのだ。)

・・・・・固唾を飲み、ゆっくりとドアを閉める。緊張感が感覚を鋭敏にするのか、静まり返ったトイレ内は無音過ぎて耳なりがする。・・・・・背筋に冷たい汗が流れる。

そして、Aさんは勇気を振りしぼり、大声で叫ぶ。

「は〜な〜こ〜・・・・・・・!!!」

 言い終わるかどうか、すんでのところで、閉められたドアの内側から、

ドッ!ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ドッッ!!

 すさまじい勢いでものすごい数のノックがなり響いたのである。
Aさんは、半泣きになりながら、猛ダッシュで廊下を駆け抜け逃げ帰ったという。

 今、当時を振り返ってAさんは言う。
人からすれば、くだらない都市伝説でも、生涯で一番怖い思いをした、と。