恐怖怪談集0003

危険信号


 Sさんという人物がいる。
Sさんは、高校時代から心霊スポット探検や、怪談話などが大好きで、親友の方と私設オカルトサークルなんかも設立している。親友のFさんとは、お互い社会人になって独立してからも、年に2〜3回は会い、怪談話をし、近況の心霊スポットへと赴く。
 高校時代から、Sさんはよく金縛りにあっていた。彼は強者で、金縛りにあうと、「ふんっ!!ふんっ!!」と体に力を入れると解けるのだという。
 そんなSさんの独り暮らしの家でのつい最近の話である。

 ある夜、彼はいつものように床についた。なんとなく寝苦しい夜であったのか、彼は、なかなか寝付けずにいた。
その時、彼は見覚えのある感覚に襲われる。金縛りだ。彼は金縛りにあうとき、前兆を感じるのだという。耳鳴りのようなものが来て、ぞわぞわぞわっと、半ばゆっくりと金縛りになるのだという。

 私にとって金縛りとは、かなりの恐怖体験だったのだが、彼は馴れっ子になっていた。いつものように解こうとするのだが・・・・・解けない。「ふんっ!ふんっ!」ってやっても解けないのである。

 暫くもんどり打っていると、ただならぬ気配を感じる。何か聞こえる。

・・・・・・・・・・・・・「?」

 なにやらブツブツ・・・誰かがブツブツ言っているような・・・・。

・・・・・・・・・・・・・「??」

 よく聞いてみると、それは「お経」だった。いつもと違う事態に戸惑い、慌てるSさん。しかし体は動かない。

彼は確信した。得体の知れない何かがいる。足元に何かが。

 金縛りにあった人が、口を揃えて言う。金縛りの最中って、何故だか「目」だけは動く。

気配を感じる所、足元に視線を向けてみると・・・・・

 そこには、笠を被った虚無僧(こむそう)が立っていたのである!!!!!!!!

 虚無僧は、音もなく滑るように、それでいてゆっくりとSのもとへ近づき、枕元で止まった。

 笠でこちらからは見えないが、Sさんを見つめる虚無僧。

・・・・・すると、Sさんの首から上が、操られたかのように、意思に反して、ベッドの向かいにあるテレビに向けられたのである!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・ここでSさんは、意識を失った。

 何事もなく、数日が過ぎ、彼が部屋の掃除をしていた時のこと、何の気なしに、テレビの後ろを綺麗にしようと覗き込んだ。
 ・・・・ある異変に気づく。テレビの裏側には、神社で買った御札が落ちていたのである。つい最近まで、テレビの後ろの壁に貼り付けてあった筈の御札が落ちていた。

・・・・彼は全てが分かったような気がした。Sさんは言う。
 「虚無僧は、御札が落ちていることを知らせに来たんだ。」と。