恐怖怪談集0005

廃墟病院探検

 
 結構昔の話である。
 私の結成するオカルトサークルは、いわく付きの品物、ミステリースポット、心霊スポット、怪談などを取材し、会報に掲載し会員に発行するというスタイルで活動していた。
 その日も、取材対象をさがして活動していた時である。知人から、あるニュースが舞い込んできた。
「知り合いの病院が潰れた」と。正確にいうと潰れたのではなく、「移転の為に潰した」のだった。
快くも、病院管理者は私たちに、心霊取材を許可してくれた。これはそのときの話である。

 探索メンバーは4人。サークルのメンバーである。今回の活動の趣旨は、「写真を取りまくり、心霊写真をゲットする」というもの。広大な廃墟を前に、スクープを目指し躍動感溢れるメンバー達。

 進入する。とにかく広い。ちょっとした遊園地以上だ。あたりをくまなく撮影する。広い。広すぎる。
そこでメンバーは4人に分かれて行動しようということになった。そして最後に中庭に集合。それぞれ本館、中庭、看護婦寮、別館といった感じでちらばった。トランシーバーも用意。万全な状態で臨んだ。

 私の担当は本館。まず、地下から、進む。霊安室が目的だ。・・・・・だが、手術室は撮影できたものの、肝心の霊安室は見つけることができなかった。
 気を落とさずに、1階ロビーから階段を上り、病棟へと向かう。病棟ならいい写真が撮れるはずだ。
期待に胸を躍らせ、一歩一歩階段を進む。階段を上りきり、病棟の長い長い渡り廊下に出た。

 すかさず写真撮影開始。大部屋、個室と100枚位の写真を撮影した。・・・・・・暫くして、一段落し、一服しようと廊下の窓を開けタバコを燻らせた。中庭には、私もうメンバー全員が集合しているのが、窓から見取れた。

・・・・・・・・その時である。

「トンッ!トンッ!」

 ものすごい勢いで肩を二回叩かれた。私は、その勢いでタバコを口から吐き出し、中庭に飛ばしてしまった程だった。
 私は焦りまくり、辺りを見回した。見通しの良い廊下にはだれもいない。病室も無人。仲間は中庭にいる。第一、我々以外の人間はいるはずがないのである。

 私はダッシュで、階段を駆け下り、仲間と合流。この事を告げた。一緒にいたメンバーも「キャーーーッ!!」という女の叫び声を聞いたという。

 あとで写真を現像した結果、5枚ほど心霊写真が撮れていた。今はその写真がどこかへ行ってしまい、お見せする事はできないが、人の多く集まる場所、とりわけ生死に関わる場所というものは、確実に「いる」のである。