恐怖怪談集0019

九州の犬鳴山(其の2)

 
 「恐怖怪談集第19話」で犬鳴峠の怪談を掲載した。この話のネタ元、A氏から新しい話を聞いたので、掲載したいと思う。

 この間「第19話」を掲載した事をA氏に報告すると、さらに新しい情報を教えてくれた。

何かの事件に巻き込まれ「灯油をかけられたて焼死」した人の話、トンネル周辺で「鎌を持ったお婆さんが追いかけてくる」話、トンネルの前に「女性用の衣服が落ちている」という話などだ。

 全て事件性のある話である。地元では専ら語り継がれていることであるそうだが、詳しい真相はわからないという。ただ、新聞にも載った事件もなきにしもあらず、ということだ。やはりこの土地にも怨念渦巻く何かがあるのだろうか?

それから、氏の体験談へと話が進む。

 犬鳴トンネルの手前を走行中、「がけ崩れのような、とてつもない大きな音」がしたという。
同行していた友人全てが、身の危険を感じ、頭を抱えうずくまったという。

しかし、犬鳴山トンネル出会った別のグループにその話をしてみると、そんな音はしていなかったというのだ。

この手の話には、古来からルーツがあり、「山神楽」と呼ばれる怪現象の一つである。私、黒犬自身、高野山で同じような体験をしている。(恐怖怪談集第7話 参照)

 この話の流れから、A氏自身のもっとも戦慄した体験談をお聞きすることができた。
・・・・ただし、

  
・・・・この話をすると必ずA氏に不幸が訪れるという。・・・・


 この言葉を聴き、とりあえず掲載前に、氏に「お札」を渡し、暫く様子を見て何も不幸が訪れなかったら掲載しよう、という運びになった。

 ・・・・・ということで、氏に「お札」をわたして一週間目の今日、この話を公開する。



  ・・・・・・その日もA氏は仲間たち数人で車を走らせ、犬鳴峠に来ていた。

 暫く車を走らせ、スピード感を楽しんでいたという。

 峠道の脇は森になっており、杉のような細く長い木がたくさん天にむかってそびえたっている。

 なにを思ったか、A氏は運転中その木々のてっぺんにふと、目をやった。


・・・・・・・杉の木のてっぺんになにかが見える。

・・・・・・・・・・・目を凝らして、何かいるのか、よく見ようとした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次第に目が慣れてきてピントが合う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そこには・・・・・

   白い着物を着た髪の長い女が木のてっぺんに立っていた

のだという。

 A氏は、あわてふためき、車を停車して、同乗する仲間に木のてっぺんを指差し説明したが、見えるのはA氏だけであったという・・・・・・。

 それから暫く、A氏の夢に「白い着物の女」が現れるようになってかなり困ったそうだ。

 この話をすると、A氏に不幸が起こる。たとえば・・・交通事故などだ。

それは、暗に、A氏にその着物の女性が今も取り憑いていることを示唆しているのかもしれない・・・・。