恐怖怪談集0022

背負っているモノ

 
K氏の父は、若い頃、仕事の関係で暫く対馬島に滞在していたことがあるという。

対馬島とは、古くは朝鮮半島からの文化の交流点であり、第二次世界大戦では、
大戦場にもなったところで、いまもなお、自衛隊の駐屯地が存在する。

いつものように、仕事をしていたK氏の父は、急に気分が悪くなってきた。
と、その瞬間、自分が誰なのか、ここはどこなのか分からなくなったという。

あとからその時周囲にいた人に聞いたことだが、

「船がくる・・・船がくる・・・」

と、繰り返し訴えていたらしい。


それからも、記憶が全くもどらなかったK氏の父は、島で一番偉い「呪い師」に
みて貰うことになった。

すると、呪い師曰く・・・

「7人もの女が、あなたに憑いている」

とのことだった。

呪い師は、なんとか憑き物を落とし、その後わざわざ出雲大社に出向いて除霊を
完成させたという。

K氏の父は霊媒体質らしく、本当に無事に生きていられたのが奇跡のような事件だった。


・・・・それから後、憑き物は確実に祓えたらしいのだが、寝ている間に動きまわるように
なった。K氏の母が連れ戻し、落ち着かせ布団に寝かせるということが、度々起こったという。
朝になって、当の本人であるK氏の父に聞いてもさっぱり記憶がないという。


「夢遊病」と言ってしまえば、それでおしまいだが、知り合いの家でもこんな事件があった。

・・・その当時まだ小学生だったその家の子供が、夜、ベットから、転げ落ちた。

何事か!?と、様子を見に行くと、ベットから転げ落ちた子供がまさにその場で颯爽と立ち上がり
部屋の中を徘徊しだした。トイレのドアを開け、のぞき、そして閉める。また徘徊し、その後、
自分でベットに入った。寝起きとは思えないほどの歩行スピードだったのを覚えている。
・・・・途中、声をかけたが、聞こえていないようだった。
もちろん、あくる朝、聞いてみても、全く覚えていなかったという。

・・・・そういうことが何回かあった。
・・・・なんとなく心当たりがあった。この頃、家の中で頻繁に幽霊が目撃されていたのだ。

で、心霊スポット巡りや、怪談の会、心霊系ビデオの鑑賞など、一切の幽霊に関わる行為を
止めてみたという。・・・そうすると、子供の夜中の徘徊がピタッと無くなったのだ。


ある著名な心霊研究家が言っていたのを覚えている。
「夢遊病の原因の半数は、霊による憑依だと思います」と。