身の回りの怪談0001

移動するもの1


 主婦の私は一日の大半をリビングで過ごす。

 家事も、テレビを見て寛ぐのもパソコンもリビングに置いてある。

 リビングは3LDKの真ん中にあり、すべての部屋の入り口へと通じている。

 だからリビングに居ると、どこに誰が居るのか大体分かる。

 リビングの扉の一つは8枚の擦りガラスがはまっていて、そのガラス越しに向こう側が透けて見える。 

 ある日いつものようにリビングに居るとのガラス越しに何かが見えた。

 ・・・・・・・・・・・・?
 
 細長い白い布切れのようなモノがに中に浮かんで

 すぅっと動いていた

  
 今、目で見ているもの、それが何か分からない。

 ・・・・・・脳が検索している瞬間それが消えた。

 一瞬の事だった。 

 (・・・・・・目の錯覚かもしれない。)

 今までも、そうやって錯覚という事にしてきた。

 この話を長男にしたところ・・・「それ、俺も見た事あるかもしれん。」と言い出した。

 ある日、長男は二段ベッドの上の段に寝ていた。下の段には、弟と妹が寝ていた。

 (時々寝る場所を替えている)

 長男はなかなか寝つけなくて苛々していた。
 
 弟と妹の寝息を聞きながら、早く眠ってしまいたいと思っていたらしい。

 何度か寝返りを打った時、ベッドの転落防止の柵の間から、何かが見えた。

 (・・・・・・・・???)

 それは縦に細長いモノで白っぽい色をしていたらしい。

 何だか分からないで見ていると、目の前をゆっくり移動して消えていったという。

 長男はTシャツを持ってきて、どんな形のモノだったかを作って見せてくれた。

 それを見て私は ぉぉ〜っとした。
 
 それは私がリビングでからガラス越しに見たそのものの形だった。

 見た場所も時間帯も違うけれど、長男と私は多分、同じものを見たんだと思う。