身の回りの怪談0010

隙間から出てきたモノ

   
 不思議なモノを見ても、段々慣れて来て家族みんなが一々騒がなくなってきた。

 子供達も、普通に話すので、私も家事をしながら

適当に聞くようになってしまっていた。
 

 その日も子供達が報告しに来てくれたのに

「うん、うん。」って適当に返事をしていたらしい。

 後に、この話がもう一度出た時、私が新鮮に驚くので

「この話しは前にしたやん。」と長男に呆れられてしまった。 

それは二男の奇妙な体験である。 


 ・・・たま〜に仲のいい二人はその日、何かの話題で盛り上がっていた。

 そんな盛り上がっていた話の途中、長男がトイレに立った。
 
 二男は兄と話ながらトイレに付いて行き、

トイレのドアの前に座り、兄が用を済まして出てくるのを待っていた。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二男が待っていると、トイレの扉の下の隙間から何かが出てきたのです。


【 ここからは長男と二男との会話です 】


(二男)  
 ・・・・・???「何か出てきたぁ!」

    (笑) 「兄ちゃん何やってんの?!」


(長男)
  「・・・・・・何って・・・う○こしとんじゃぁ!」


(二男)     
(笑)・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・「あっ、引っ込んだぁ・・。」


 トイレのドア越しにこんな会話があったのです。


【ここからは二男が語った話】


長男がトイレから出てくるのを待ってると
 
 トイレのドアの下、数ミリも無い隙間から

突然、何かがすぅーっと出て来た。

 それは、長くはないが、束になって出てきた髪の毛だった。
 
 その一束の髪はドアの下の隙間を

右・・・左・・・と移動した。


 二男は、てっきり、兄がふざけて、トイレの床に這いつくばり

自分の髪を無理矢理隙間から出しているものだと思い、
 
 面白くなって、移動するそれを笑いながら追いかけ、つまんだ。

 そして、それを少し引っ張ってみた。 

 二男が引っ張った途端

 それは・・・スルッと中に引っ込んだ。


トイレから出てきた長男はそんな事はしていないと言う。

中学生である長男は狭いトイレではそんな体勢は取れない。

何より、奇麗好きで汚いものが大の苦手である。

 トイレの床に這いつくばるなど、絶対しない。出来ない。

長男はトイレをしながら、弟は何を言っているのだろう?と思っていたと言う。        
 
 一方、二男は兄だと思ってそれと遊んでいたという訳である・・・・。 


 不思議なモノを見ても一々騒がなくなってきた子供達は

この話しを笑いながら話してくれる。