身の回りの怪談0020

錯覚 


 箪笥の置いてある部屋から時々怪音がする。

 その部屋には誰もいないのに、紙をガサガサ何か探し物でもしているみたいな、そんな音がする。

 その音を隣のリビングで私も長男の聞いている。

 もう、慣れっこになってしまったせいか、長男は気にしないでテレビに夢中になっている。

 以前はライターで火をつけるようなカチッカチッという音がしていた。

 その当時、長男がその音をよく聞いていた。

 一人で留守番をしている時なんかは、怖くなってテレビの音を大きくしたりしていたらしい。
 
 それから暫くして、私もその音を聞いている。 

 夜、主人と私が隣同士の部屋にいてそれぞれが奇妙な音を聞いてお互いだと思っていたこともあった。

 私にはコップの中にある氷をカラカラと回すような音に聞こえたので、隣の部屋にいる主人が

 何か飲み物を飲んでいるのだと思い、主人は主人で、網戸を開けるような音に聞こえたので、

 隣の部屋に居た私がベランダのドアを開けたのか?それとも泥棒かも?と思い見に来り・・・と色々ある。

 奇妙な音だけでなく、奇妙な光も時々見える。 
 
 小さな小さな光が二人の目の前を、蚊が飛んでるいる様な動きで移動して行くのを見たり、

 タバコが出す白い煙のようなものが、二人の目の前をスゥーと流れるのも見たりもする。

 それも、一度や二度ではない。

 子供は夜、寝床の中で扉のガラス越しに黒い帯状のものが移動しているのを頻繁に見るようになった。
 
 気持ち悪がるので私はそのガラスに目隠しのシールを貼った。
 
 それでも、見えると長男は言っていた。中途半端に見える為余計気持ち悪いと言うので、シールは剥がした。

 二男もその黒い影を見たと言う。

 二人で見ても聞いても一体何なのかは分からない。

 私達が見た光や影や煙など、

 一人だと錯覚で済ましてしまうようなものなのかもしれない。

 二人同時に見るようになってから、考えた。

 一人の時に錯覚だと今まで思っていたものも、本当はどうだったのか?