身の回りの怪談0021

 金縛り


ここへ越して来て、色々と奇妙な光や影を見るようになってから暫くした頃です。

ある日私はとうとう金縛りに遭ってしまいました。

子供の頃から金縛りにはよくあっていましたが、もう何年もそんなことはなかったのです。

朝、二度寝をしようとした時にそれは突然起こりました。

ザワザワザワ・・・と耳もとで音がし始め、体が硬直していく事に気づきました。

少し向こうで、子供が何か話しているような声がかすかに聞こえてきました。

そして、「お母さん〜・・・」と話しかけている声がし、

パタパタパタと小さな足で駆けるような足音が近づいてきて、

私の寝ている枕元を通り過ぎて行くのが聞こえてきました。

私の枕元にはテレビボードがあり、ぎりぎり一杯布団を敷いていたので

人が通るスペースはないのですが、そこには、空間があるような感覚でした。

それから、必至でもがき、何とか金縛りは解いたのですが、

もう、寝る気持ちにはなれませんでした。

私は前の住人の事が気になりました。

ある時、管理人さんに訊いてみることにしました。

管理人さんは、割りと何でも話せる気さくな女性で、日頃からよく話していたので、

思い切って訊いて見ることにしたのです。

・・・・管理人さんは色々話してくれました。

前の住人は管理人さんの友人らしく、現在近くに家を購入して

家族全員元気で暮らしているそうです。

その以前はこの管理人さん家族が住んでいたそうで、奇妙な体験などはされていないようでした。

以前の住人さんは子供がいたそうなんですが・・・・・

子供の足音や、声、それは以前の住人の残留思念のような物ではないか?

家が前の住人を覚えていて、まだ引越して来たての私達が、

それを感じてしまったのではないか?

『家が記憶している』そんな話を以前聞いたのを思い出したのですが・・・・・。